それでもボクはやってない

僕が求めていたのは、まさにこの様な映画だ。



長らく更新をお休みしていたブログを、再開するモチベーションを与えてくれた周防監督にまずはお礼を言いたい。「ありがとう。」ちなみに、ブログを移転したのは、アメブロに色んな意味でウンザリしていたから。え〜と、理由は・・・って、そんな事はどうでもいいね。



ブログの更新が止まっている間も、前と変わらない、あるいはそれ以上のペースで映画は観まくってた。でも、どうも筆を執る気になれなかったのは、仕事で疲れて・・・という以上に、エントリにしたいと心から思えるような映画があまりも少なくて(まあそれは今に始まった事じゃないけど)、そういうのをイチイチやっつけでエントリにしても「しょーがねーよなー」という気持ちがあったから。いまでもそういう気持ちはあるんだど、そんな気持ちを完璧に吹っ飛ばしてくれるのも、やはりまた映画なんだね。



「shall we ダンス ?」の周防監督、11年ぶりの新作「それでもボクはやってない



異常とも言える完璧な出来だった。映画が始まった瞬間に、これは本気で作られた映画なんだと、僕の映画嗅覚がはっきりと教えてくれた。もう映画のあらゆるディティールから、製作サイドの本気が伝わってくる。



ボクは、映画を評価する時の基準ってなんだろう?と、長らくわりと真剣に考えてきたんだけど、だれもが納得出来る評価なんて当然ながらどこもにもない。だけど、だれもが感じ取れて、ある程度の指標となってくれるものはある。それは、製作サイドの映画作りに対する情熱だ。もちろん、本気で作ればそれが即傑作って訳ではないけど、少なくとも本気で作られてないものは、市井の人が認めると言う意味での傑作にはならない。まあ当たり前っちゃ当たり前なんだけど、観客にも伝わる程度の)本気で作られてる映画があんまり少ないと、そういう当たり前の事さえ分らなくなったりする。(心あたりのある日本映画界関係者心して聞け!)



それでもボクはやってない」は、日本の刑事裁判に鋭く(鋭すぎて、ちょっとこれヤバくないか?って観客ですら思う。特にラスト)切り込んだ社会派映画であるものの、観客をドラマにグイグイと引き込む優れたエンターテイメント性、ストーリー性を兼ね備えている。痴漢冤罪という都会の満員電車に乗った事のある男性なら誰もが恐怖する題材を持ってくるところも、この問題を誰もに興味を持って欲しいという腰の低さを感じさせる。そして、2年にも及ぶ徹底取材の蓄積が、映画の随所に感じられ、凄まじいリアリティを生み出している。



実は、映画館で観た映画としてはコレが2007年一本目なんだけど、今年これを超える映画は、もう洋画・邦画併せても出てこないんじゃないかと思う。それくらいの出来だった。もちろん、それは映画としての出来の良さもあるけど、何よりも映画から伝わってくる強力なメッセージ故にそう思った。監督の日本の刑事裁判に対する、疑問と激しい怒りが、(文字通り)くっきりとスクリーンに刻まれている。



ボクは、その様な表現にぶつけられた激しい感情を、久しぶりに感じて、ほとんど泣きそうになる位にショックを受けた。そのショックゆえに、「そうだ!ブログ再開しよう!」っと思った。周防監督に触発されてなんて言ったら畏れ多いけど、やっぱ表現する事ってちゃんと意味があるんだな。それでホントに人が動くって素晴らしいなって、マジで思った。監督ありがとうございました。



という訳で、コレは本当に素晴らしい映画なので、このエントリと読んだ人は、必ず映画館に足を運んで下さい。1800円で安いと思える稀有な映画です。