レボリューショナリー・ロード

レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで スペシャル・エディション [DVD] レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで スペシャル・エディション [DVD]



角川エンタテインメント 2009-06-05

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これはある意味めちゃめちゃ怖い話。



この20世紀映画史上に燦然と輝く超有名カップルが、神経症的に不幸に突き進んでいくのだから凄みが違う。監督は『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデスなんだが、この監督は、アメリカ郊外族の悪夢的なものに一貫して興味があるのかしらん。でもあれも、10年前の映画か。。。スティーブン・キングもそうだけど、アメリカ郊外の悪夢ってモチーフは、やっぱ実際の郊外族からすると、かなりリアルな悪夢なんだろうとは思う。



この夫婦は、理想郷とでも言わんばかりに描かれる閑静なレボリューショナリー・ロードに引っ越してくるわけだが、自分たちは特別で、もっと幸福になれるし、自己実現する事こそ人生という妄想(というかケイト・ウィンスレットのそれは完全に狂気)にとりつかれている。自分の今の人生は、本来の自分には相応しくないと信じて疑わない。そして、周りもあの夫婦は特別だと煽る。



まあ、もっと今風かつ日本風に言えばかなり深刻な『自分探し』病に陥っている妻を現実的な夫がかろうじて支えるのだが。。。という所で物語が展開していく。



とかく、ラストシーンの皮肉っぷりも凄い。それまでのドラマはこのシーンの前振りですかと思わせる程。



サバービア・ムービー
という位置づけからは、ちょっとズレるが、十分そういう視点は描かれる。サバービア達が抱える本質的な空虚感をこれ程丁寧に描いた作品はない。



でも、こういうサバービアの恐怖ってのは、意外とままならい問題だったりする。この夫婦に関して言えば、それは自分達は特別だという傲慢さの自業自得に近いので、ちょっと違うが、基本的には空虚さを埋めるのは人間関係しかないという結論は同じ。そう、この妻には家以外に日常的な人間関係が存在しないのが問題なのだ。だから、ありとあらゆる感情が夫に集中してしまう。これでは、どんなにお互いに気持ちがあっても上手く訳がない。一人の人間の感情をずっと同じ人間にぶつけるというのはフェアな人間関係ではないからね。



でも、これは専業主婦なら何とかさばかなければならない問題でもある。昔の日本とか(あと今の田舎でも多少)だと、共同体って残っていたけど、現代人が求めるのはそういう濃密で、強制的な関係性ではないのは胸に手をあてればわかるよね、田舎者の皆さん(俺含)。でも、都会は都会で、公園デビューとかしたい訳で、やっぱ人間関係が家しかないってのも、それはそれでツライ。で、そうなると、自分の好きな人と、好きな時にという関係性が適度でいいよね。という態度になるけど、これは人としてあまりにも傲慢な態度とも言えなくもない訳で、やっぱままならない問題ですね。というあたりが、現代の現状。



でそうなると、この夫婦の私たちは特別であるべしという狂気の正体もなんとはなしに見える。そうでも思わないと空虚な現実に耐えられない訳だから。その一つのソリューションが現代だとネットだったりするかもしれないけど、これもそんなに上手くいっていない。