God is in the details

こないだcinemayukikaki.blog.shinobi.jp/Entry/41/ワインバーグ本の感想ごにょごにょ。



本当に良い本の、良い所を、誰かに伝えるというのはとても難しい。

良い本というのは大体において無駄がないし、何度も読み返す事で、その滋養を吸収出来るものだ。



だから、自分ごときが要約して伝えらる事は無いだろうな。というのが、僕が本をオススメする時に常に抱く本音である。最終的には、「良い本だから読んでください」としか言えない。



それでその人が、その本を手にとって、さらに読んで、「あれは素晴らしい本だったよ」なんて言って貰えると、自分が書いた訳でもないんだけど、なんだか妙に嬉しい。



また、別の問題もある。



良い本を読んだとしても、タイミングが悪ければ、心に残らないという事も、ままある事だ。

かの細菌学者であるパスツールはこんな言葉を残している。



Chance favors the prepared mind (直訳:チャンスは準備された心を好む)



(Chanceの部分を、Good Bookとでも置き換えて下さい。)



昔読みかけて途中で放ったままにしてた本を、ふと、読み返してみて、「う〜む・・・これは素晴らしい本じゃないか!」という様な経験が何度もある僕としては、身につまされる言葉だ・・・。



という訳で、良い本の、良い所を伝えるのはとても難しいので、

この「スーパーエンジニアへの道 〜技術リーダーシップの人間学〜」をどの様に紹介すればいいかと真剣に悩んでいるうちに、2週間も経ってしまった。(嘘。怠けてただけ)



でもまあ、素晴らしいとだけ言っていても伝わらないのが世の中であるから、

以下、色々と書いてはみますが、やはり、「良い本だから読んでください」というのが結びの言葉です。



(結びの言葉の後に、本題に入るのも変なものだ。)



この前も書いたけど、タイトルだけで判断すると、この本は読者をかなり狭く限定してしまうが、これは組織の中で仕事をする人全てが対象読者と言ってもよいと思う。



そう。一人以上の上司、あるいは、一人以上の部下がいるというあなたは対象読者です。



この本の骨子を無理やりにでも、引き出すとすれば、

「誰かと一緒に仕事する時に(特にあなたがリーダーである場合)、あなたはどの様にすべきか?」という事に尽きると思う。少なくとも僕はその様に読んだ。疑問形なのは、この本が、「はい。これが答えですよ」というHow to本ではなく、「その答えを見つけるのはあなたです」というスタンスで一貫しているからである。



そして、この疑問形のスタンスこそが、良きリーダーの重要な資質の一つでもある。優秀なリーダーというのは、普段から、不断の問いをしながら仕事に臨んでいる(ダジャレじゃないよ)。それは、仕事に対して向けられるし、仕事のやり方に対しても向けらるが、真っ先に疑われるのは常に自分自身という事になる。



こういうスタンスで仕事を続けるのはツライものだ。だるま落としの一番上に乗っかって、自分で足場をスコンスコンと抜き続けるようなもんだ。どんだけ高く積んでも、なかなか上に行かないし、いつもスコンスコンとやっているから、とっても不安定。



でもこういう姿勢こそが優秀なリーダーの絶対条件である。不断の疑問形の思考が、人、物、事の変化を敏感に感じ取り、常にそれにあった行動を起こせるからである。また、状況そのもの自体に変化を起こせるからである。でも、残念な事にそれが常に上手くいくとは限らないのである。というか殆どの場合は上手くいかない。端的に言って、報われない。だから、ワインバーグ御先生も、エピローグをこんな書き出しで始めている。少々長いが、引用する。



「私は読者に対して、問題解決型リーダーに関して知っていることのほとんど全部をお話した。だが、私にはいえないことが一つある。それは読者がそうなることを好むかどうかである。誰もがリーダーになることを好むわけではない。だが多くの人々は、自分がそれを好んでいないと気づくのが遅い。そう気づいた時には、彼らはもとの地位に戻る為に必要な技能や、態度や、幻想を失っているのがふつうである。彼らは自分達の動機を、行動を起こす前に調べてみるべきだったのだ。だがもちろん、彼らはそうはしなかったのである。私は何十年にもわたってリーダーたちのためのコンサルタントを務めているが、いまなお彼らは私にとってまったく理解できない存在である。知性を備えた人間が一体どうして、他人の人生を組織するという危険を冒すのだろう。(中略)理屈は、理屈に基づいて導き出されたのでない結論を打ち消す事は出来ない。だから、理屈をいう代わりにあと二つ、物語を記す事にしよう。(以下略)」



その二つの物語はとても興味深く、示唆的だが、それは皆さんが自身で読んで感じとって欲しい。



もちろん、僕はその二つの物語を既に読んだ。そして、今の所リーダーになんてなりたくないと感じている。同時に、自ら進んでリーダーになろうとする人の気持ちも分かる。恐らくそれは、プライドの問題だ。自分自身に対するプライド。そういうもので人はあまり幸福になれるとは思えない決断を下す事もあるのだ。もちろん、誰も褒めてくれない。失敗すればもちろんだが、成功してもその努力に見合う程には報われない。でも、それが本物のリーダーの宿命である。(余談だが、もしリーダーが大きな顔をしているとしら、その組織は臭え組織という事になる。)



僕としては、その様な不断の問いを続けているリーダーと共に仕事がしたい。そして、自分自身も同じようなスタンスで仕事に臨みたいと考えている。何でかと言うと、不断の問いを続けて仕事の細部に気を配ることは、仕事を楽しくする殆ど唯一の方法だと思っているからである。人生の少なくない時間を注ぐ訳だから、とりあえず、楽しく仕事がしたい。今のところ、常にそれが出来ているとは言い難いが、そうありたいと思いながら仕事に臨んでいる。



結びの言葉はもう書いてしまった。