歩いても歩いても

歩いても 歩いても [DVD] 歩いても 歩いても [DVD]

阿部 寛, 夏川結衣, 樹木希林, 原田芳雄, 是枝裕和



バンダイビジュアル 2009-01-23

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今年度の邦画の締めはコレと思ってとっておいた作品。というのは嘘だけど、家族ドラマとしは希有な出来映え。小津っぽいローアングルもあったりして、確かにそう言う雰囲気はあるが、あくまで現代劇に仕上がっている。



亡くなった長男の命日に実家に帰省する次男の良多(阿部寛)と再婚相手のゆかり(夏川結衣)と息子のあつし(田中祥平)。それを迎える隠居した町医者の父(原田芳雄)と母(樹木希林)、先に帰省していた姉のちなみ(YOU)とその夫(高橋和也)。これだけの家族の一日を描いているだけなんだけど、それぞれの人物の何気ない言葉、仕草、表情。たったそれだけでスッスッとこっちにその人物の心の陰影が伝わってくる。上手い。



「誰も知らない」でも思ったけど、この監督は子供の時間を画にするのが信じられない位上手い。岩井俊二なんかが、よく記憶を想起させる映像を撮るが、こと子供時代の記憶を想起させるなら是枝監督にかなう相手はいないのではないかと思う。視点とか音とか汗の感じとか、それを自分が経験したかどうかはさておいて、自分が失った憧憬を想起させる。こういうレベルの現実性を突きつけれらる映像を撮るれるのは才能以外の何ものでもないと思う。感動させる画を撮るのは、多分努力で何とかなるが、これだけは絶対努力では出来ない。



といってもすがすがしいドラマでは全然ない。それぞれがそれぞれに残酷であり優しく利己的だ、そういう切り替わりがサッサッといくので素晴らしい。一つの感情に拘泥せず、すぐ次のシークエンスに行く。現実も多分そんな風であるような、そういうペースを崩さない。そんな風に撮られる人間がとても魅力的に映る。それぞれの小さな想いとか後悔がその人の残酷さの根拠でも美点でもあるような、そんな風に人間がとらえられている。



個人的には、いちいちカットが素晴らしかった。そのカットに入ると、もうそこしかねえよなぁと思ってしまう。



ぐるりのこと」「おくりびと」「歩いても歩いても」のすべてに言えることだが、今年度は家族を描いた秀作が多かった。

この三本は、今年の邦画ベスト3っていうか、映画ベスト3だな。ベンジャミン・バトンなんてもうね。。。。



敢えて順位をつけるとこんな感じ。



1.歩いても歩いても

2.ぐるりのこと

3.おくりびと




みんなオススメだけど、一本観るなら「歩いても歩いても」で決まり。